主催: 日本トキシコロジー学会
【目的】3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (PCB126)は煙突の煤煙や固定廃棄部・土壌中に高濃度に分布し、また他のダイオキシン類に比べ生物濃縮性が高いことが知られている。さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている。近年大腸がんや胃がんの罹患率は非常に高いが、世界中でのがんでの死因は肺がんがトップであることが知られている。特に女性に比べ男性での発生率が高いことも知られている。我々はPCB126胎生期暴露が、次世代・雌ラットにおいてN-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine 誘発肺がんの雌雄差にいかなる影響をおよぼすかについて検討した。【方法】SD(slc)ラット妊娠13-19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、2.5ng/kg/day(2.5ng群)連日経口投与を行い、対照群として同量のCorn oilを与えた。出生後、8週齢にN-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine 2,000ppmを8週間連続飲水投与後、33週齢で安楽死後剖検した。【結果】全群の肺組織において過形成、腺腫、腺癌、腺扁平上皮癌が認められた。雌雄差においては雄の方が雌に比べ早期に斃死が認められた。得られた組織からWestern blotting解析によるCYP1A1およびCYP1B1での発現ではPCB投与群での高発現が認められ、N-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine投与での発現が有意に増加を示していた。【総括】本検討から、N-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine誘発ラット肺がんの生物学的特性が胎生期PCB126暴露によって影響を受け、さらに雌雄差での影響にも関わることが示唆された。