日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-24
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一般毒性
 Benzo[a]pyreneの光反応中間体によるDNA二本鎖切断およびヒストンH2AXのリン酸化の誘発
*大貫 剛豊岡 達士伊吹 裕子
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抄録

多環芳香族炭化水素のひとつであるbenzo[a]pyrene (BaP)は物質の燃焼等により発生し広く環境中に分布している。環境中に放出されたBaPは常に太陽光照射を受け分解されるが、その過程で生ずる光反応中間体の生体影響に関する知見は極めて少ない。本研究ではBaPの光反応中間体を作成し培養細胞への影響を検討した結果、光分解を受けたBaPがDNA二本鎖切断およびヒストンH2AXのリン酸化を引き起こすことを明らかにしたので報告する。
BaPに擬似太陽光を2日間照射したLBaP(light-irradiated BaP)はCHO-K1細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘発した。この細胞死はCHO-K1細胞の突然変異体でありDNA二本鎖切断修復酵素(Ku80)が欠損したxrs-6細胞において有意に上昇したことから、LBaPの細胞毒性にDNA二本鎖切断の関与が考えられた。そこでパルスフィールドゲル電気泳動法による切断DNA二本鎖切断の検出を行ったところ、BaPでは切断DNAが確認されなかったが、LBaPにおいては明らかな切断DNAが検出された。また、近年DNA二本鎖切断に伴いヒストンH2AXのリン酸化が誘導されることが報告されているので、LBaPによるヒストンH2AXのリン酸化の有無を免疫染色法により検討した結果、ヒストンH2AXのリン酸化はLBaPの濃度依存的、時間依存的に増加することが判明した。抗酸化剤であるN-acetylcysteineによりヒストンH2AXのリン酸化は有意に低下した。さらに細胞内活性酸素量を蛍光試薬DCFH-DAにより定量した結果、LBaP作用により有意に上昇したことからLBaP作用による活性酸素の産生がDNA損傷に深く関与していることが明らかとなった。

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© 2007 日本毒性学会
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