日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-234
会議情報
トキシコキネティス/薬物代謝
ヒト初代培養細胞を用いたCYP3A4及び1A2誘導評価系の構築
*矢島 加奈子中村 稚加松野 喜代美若林 摩代松下 聡紀小原 栄佐藤 洋子鵜藤 雅裕福? 好一郎永田 良一
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抄録

【目的】近年,実験動物とヒト間における薬物代謝の種差が多く報告されており,ヒト組織を用いて薬物代謝酵素の誘導を評価することは,臨床における薬物動態を予測・考察する上で,有用である.本演題では,凍結ヒト肝細胞を用いて,薬物のCYP3A4及び1A2の誘導を評価する試験系を確立することを目的として,複数ロットの凍結肝細胞を用いて,mRNA発現レベル及び酵素活性レベルで予備培養時間及び誘導剤の曝露時間による誘導率の経時的変化を比較検討した.
【方法】肝細胞(T-Cubed社及びXenotech社)は,各社の推奨プロトコールに従って融解及び播種し,96wellコラーゲンプレートを用いて培養した.予備培養及び誘導剤の曝露時間は,それぞれ24,48又は72時間で検討した.誘導剤として,リファンピシン及びオメプラゾール(終濃度:10μM及び50μM)を用いた.mRNAの発現に関しては,各wellの細胞からQIAamp RNA Blood Mini Kitを用いてtotal RNAを抽出し,Real-Time PCR Systemを用いてCYP1A2及び3A4のmRNAの発現量を定量した.酵素活性に関しては,ミダゾラム1位水酸化活性(CYP3A4)又は7-エトキシレゾルフィンO-脱エチル化活性(CYP1A2)について,LC/MS/MSを用いて各代謝物を定量した.
【結果・考察】肝細胞のロットによって,酵素活性に大きな差が認められ,予備培養又は曝露時間による誘導率の経時的変化も異なった.well間及びplate間の変動は,いずれの条件でもCV値25%以内(n=3から5)であった.この方法によって,mRNAの発現及び酵素活性レベルで被験薬のCYP3A4及び1A2誘導能を評価することが可能であることがわかった.しかし,入手するロットごとに陽性対照物質を用いて最適条件を確認し,その条件下で被験薬の評価を行う必要があると考えられる.

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© 2006 日本毒性学会
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