日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-228
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トキシコキネティス/薬物代謝
BCRPによる医薬品、植物性発癌性物質および植物性エストロゲンの脳内移行制限
*榎園 淳一楠原 洋之Schinkel Alfred H杉山 雄一
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抄録

生体異物の中枢移行は、血液脳関門(BBB)によって制限されている。BBBにはP-glycoprotein (P-gp)などの排出トランスポーターが高発現しており、BBBの関門としての機能の一端を担っている。Breast cancer resistance protein (BCRP/ABCG2)は近年BBBにおける発現が認められた排出トランスポーターであり、BBBの管腔側に局在していることから生体異物の中枢移行を制限する関門機構の1つと考えられている。BCRPには蛋白発現量に影響を与えるSNP(Q141K)が日本人において高頻度(約30%)で認められ、BCRP基質の中枢における薬効/毒性は大きな個人間変動を示すことが予想される。これまで生体異物の中枢移行におけるBCRPの関与については報告例が乏しく、imatinibの一例のみである。そこで、本研究では、さまざまな医薬品、食品性発癌性物質および植物性エストロゲンについて脳内移行におけるBCRPの影響を検討した。化合物をマウスへ定速持続注入し、定常状態における脳と血漿中の濃度比(Kp)を野性型マウスとBCRPノックアウトマウスで比較した。医薬品についてはdapsone、dantrolene、prazosinおよびtriamterene、食品性発癌性物質についてはMeIQx、PhIPおよびその発癌性原因代謝物であるN-hydroxyl PhIP、植物性エストロゲンについてはcoumestrol、daidzeinおよびgenisteinのKp値がBCRPノックアウトマウスにおいて有意に上昇した。これらの化合物の中でBCRPノックアウトマウスにおけるKp値の上昇率が最も大きかったのはgenisteinであり、野性型マウスの約9倍の上昇が認められた。一方、topotecanやomeprazoleのようにBCRPとP-gpの両方の基質である化合物については、BCRPノックアウトマウスにおけるKp値の上昇が認められなかった。以上の結果より、BCRPは医薬品、食品性発癌性物質および植物性エストロゲンの脳内移行性を制限する上で重要な働きをしていることが明らかとなった。

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© 2006 日本毒性学会
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