日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-201
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毒性発現機序
パラコートによるマウスの肺線維化モデルの作製
*富田 正文奥山 敏子勝山 博信日高 和夫石川 隆紀
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抄録

除草剤パラコート(PQ)によるヒトでの肺線維化はよく知られているが,実験動物では個体差が大きくその線維化モデルは未だ報告がない。そこで,マウス肺を直接PQに暴露し肺線維化モデルを作製,さらに2,3の遺伝子・蛋白質についてその発現変化を検討した。
方法:雄性C57BL/6Jマウス(8-10 w)に麻酔下でPQを点鼻投与し,実験最終日に肺を摘出して切片の作製,RNAの抽出を行った。切片はH.E.,Masson's Trichrome, Elastica Van Gieson染色などで線維化を組織学的に評価し,さらに免疫染色を加えた。また,realtime RT-PCRによってRNAの発現変化を検討した。
結果と考察:PQ投与3日で,肺は肉眼的にも炎症が強く,組織学的にもリンパ球浸潤を中心とした強い炎症反応が観察された。その後,体重が増加に転じる個体は生存を維持したが,増加に転じない個体の多くは死亡し,PQの用量ー反応性が認められた。死亡したマウスの肺は強い水腫様変性と出血が全体的に観察された。他方,生存した個体では肺重量/体重(比率)がPQの用量と相関して有意に増加した。肺の萎縮は観察されず,炎症性細胞やfibroblastが観察され,肺の線維化を認めた。高用量(0.04 mg/mouse)を投与され長期間(2?3週間)生存した個体では,肺の線維化が顕著で,肺胞の融合や間質の肥厚がみられ,肉眼的にhoneycomb状を示す個体も観察された。投与後24時間と5日目の組織を中心にRNAの発現変化を調べた結果,HO-1の遺伝子発現の増加,E-SODの遺伝子発現の低下などが認められた。また12?24時間で細気管支にクララ細胞であろうと思われる細胞片がに多数観察され,生体の反応がかなり早い時期に起こっていることが示唆された。

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© 2006 日本毒性学会
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