日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-146
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生殖・発生・幼若毒性
小児適応医薬品開発のための幼若動物を用いた非臨床試験(3) FDAガイダンスとEMEAドラフトガイドラインの比較検討
*堀本 政夫小池 康司名和 徹百々 哲史西木 克侑永山 隆馬場 伸之後藤 浩彦下村 和裕佐神 文郎
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抄録

近年、小児用医薬品開発のための幼若動物を用いた非臨床安全性試験の重要性が注目されている。これを受けて、日本製薬工業協会/基礎研究部会では小児用医薬品開発のための幼若動物を用いた非臨床試験に関する検討を行っている。今回、欧米における幼若動物試験に関する基本的な考え方を理解するため、FDAにより2006年に発行されたガイダンス (FDA-GD) とEMEAより2005年に示されたドラフトガイドライン (EMEA-GL) を比較検討した。FDA-GD, EMEA-GLとも、必ずしもすべての小児用医薬品に対して幼若動物試験の実施を要求しているわけではなかった。成人での安全性データ、既存の成熟動物試験データから対象となる小児での安全性を十分評価することができない場合、毒性標的器官が神経系や生殖系など生後に発達する器官とみなされる場合には実施すべきであると示されていた。推奨する試験デザインは動物種、投与経路、投与期間、エンドポイントなどに関して両者に大差はなかった。しかし、用量設定については以下の相違がみられた。FDA-GDでは用量-反応関係がみられるように、高用量は毒性がみられる量、低用量は毒性がほとんど認められない量を設定するとされていた。EMEA-GLでは高用量は明らかな毒性を生じない量、低用量では臨床曝露に近い量に設定し、成熟動物試験と共通の用量を含めることも求められていた。この用量設定に関する相違は両者における幼若動物試験の目的の違いに起因していると考えられた。すなわち、FDA-GDでは既存データで検討されていない成長・発達への影響の評価に主眼が置かれていることに対して、EMEA-GLでは成熟動物との薬物に対する反応性の違いや生後に発達する器官への影響を明らかにすることに主眼が置かれていた。今後、この幼若動物試験の目的に関する議論を深める必要性が示唆された。

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© 2006 日本毒性学会
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