日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-139
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生殖・発生・幼若毒性
ポリ塩化ビフェニールのラット培養胎児におよぼす影響
*秋田 正治加藤 真理横山 篤原口 浩一古賀 信幸
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抄録

PCBの2,4,5-三塩素置換であるCB118、CB138、CB153およびCB180は海洋哺乳動物やヒトを含む各種動物の肝臓、脂肪組織、母乳中などに高濃度に検出される。そこで我々はCB77、CB118およびCB52を合成して、ラット胎児培養法を用いてこれらPCBの胎児毒性を調べたので報告する。
 ラット胎齢11.5日目の胎児を母獣より取り出し、48時間培養を行った。培養開始2時間後に、CB52、CB118および CB77を培養液中に10および100ppmの濃度になるよう添加した。また対照群は溶媒として使用したDMSOのみを添加した。そして培養中の胎児心拍動数、および培養終了時の胎児の形態形成について検討した。
 CB52, CB77, CB118は100ppmまで検討したが、培養胎児心拍動数に作用を持たなかった。CB52は、10ppm 処理群で培養48時間後に後肢に浮腫を発現させたのみで他に異常を起こさなかった。100ppm処置群でも曲尾を発現させたのみであった。一方、CB118は10ppm処置群で顔面部の出血や短尾などを起こし、100ppm処理群では前頭部発育遅延、上顎の低形成、口唇裂さらに全身性の発育遅延などを発現させた。CB77は10ppm処理群で上顎の低形成や口唇裂を誘発させ、100ppm処理群ではさらに全身性の出血などを起こした。CB77の組織に変化を及ぼす作用に濃度依存性が認められた。以上の結果から、WHOの毒性評価に準じて評価すれば、CB77およびCB118に強い胎児毒性が認められた。胎児に対する毒性の強さは、置換塩素の数よりも位置より変化することが示唆された。さらに、これら誘導体は心拍数に変化を及ぼさなかったことから、組織に及ぼす作用は循環障害による二次的な作用ではなくこの薬物の持つ直接作用と考えられる。今回CB52に浮腫の発現が認められたことから、毒性対象外となっている物質についても、さらに検討が必要と考えられた。

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© 2006 日本毒性学会
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