日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-111
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トキシコパノミクス
バルプロ酸暴露後のラット初代肝細胞およびヒト初代肝細胞における遺伝子発現変化
*清水 俊敦大村 功清澤 直樹上原 健城廣出 充洋小野 敦漆谷 徹郎宮城島 利一長尾 拓
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抄録

【背景・目的】トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)は国立医薬品食品衛生研究所、(独)医薬基盤研究所および製薬企業15社によって進められており、約150化合物についてラットin vivo、ラット初代肝細胞およびヒト初代肝細胞の3つの試験系で暴露試験を行い、遺伝子発現データ及び関連する毒性学的データを蓄積中である.本発表では、ミトコンドリアの機能不全を引き起こすことにより肝毒性を発現するバルプロ酸に着目し、暴露後の遺伝子発現変化をラット初代肝細胞で解析するとともにヒト初代肝細胞との比較を行い、ラットおよびヒト肝細胞でミトコンドリア毒性物質により発現変動を示す遺伝子の抽出を試みた.
【方法】ラット初代肝細胞は、6週齢の雄性SDラットからコラゲナーゼ還流法により分離した.また、ヒト凍結初代肝細胞は3ロットをT-Cubed社より購入した.遺伝子発現解析には、ラットではAffymetrix GeneChip Rat 230 2.0を、ヒトではAffymetrix GeneChip Human U133 Plus 2.0を用いた.
【結果】バルプロ酸暴露後24時間のラット初代肝細胞において主として脂質代謝およびストレス・細胞死に関与する遺伝子発現変化が観察された.主成分分析や発現変動のスコア化により、ミトコンドリア毒性発現機序の類似したNSAIDsがバルプロ酸近傍にプロットされ、ミトコンドリア機能に影響を与えるものの機序の異なるPPARalphaアゴニストや呼吸鎖脱共役物質はそれぞれ異なる位置にプロットされた.また、ヒト初代肝細胞との比較では、変動遺伝子の機能カテゴリ比較においてラットとヒト、さらにヒト凍結肝細胞のロット間において一致が見られた.以上の結果、in vitroにおいて遺伝子発現データに基づき注目化合物と種々の既知化合物との毒性発現機序の比較が可能であり、機序解析のリファレンスとしてTGP遺伝子発現データベースが有用であることが示された.

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© 2006 日本毒性学会
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