日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-108
会議情報
トキシコパノミクス
血漿中トリグリセリドを減少させる化合物を投与したラット肝臓における遺伝子発現解析
*大村 功清澤 直樹上原 健樹清水 俊敦廣出 充洋宮城島 利一小野 敦漆谷 徹郎長尾 拓
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抄録

我々はトキシコゲノミクスプロジェクトのデータベースを用いて血漿中TG減少に関連する遺伝子を選出し,それらの発現解析から作用メカニズムを解析した。
摂餌量プロファイルはそれぞれ異なるがTG減少が見られた化合物19個をそれぞれ投与したラット肝臓の遺伝子発現データから,共通して変動した207プローブセットを同定した。このプローブセットを用いて34化合物を投与したラット肝臓の主成分分析を行ったところ,大きく第一,第二主成分に分類された。第二主成分方向にはPPARαアゴニストであるクロフィブレート,WY-14,643,ゲムフィブロジルが主に存在し,PPARα活性化を示すものであると考えられた。第一主成分方向にはフェノバルビタール,オメプラゾール,メタピリレン,チオアセトアミドなどが存在した。固有ベクトル値の解析から,第一主成分に対する寄与が大きいと考えられる遺伝子の多くは,Constitutive Androstane Receptor(CAR)によって誘導されることが報告されているものであった。CARはフェノバルビタールのような薬剤によって誘導されるだけでなく,絶食によっても誘導されるという報告がある。CARは異物代謝酵素を誘導するが,それらの酵素は血中の甲状腺ホルモンも代謝することが知られている。甲状腺ホルモンはリポプロテインリパーゼ(LPL)の活性に関与し,甲状腺機能を低下させたラットでは末梢のLPL活性化によって血漿中TGレベルが低下することが報告されていることから,TG減少メカニズムの一つとして薬物や摂餌量低下によるCAR活性化があることが示唆された。第二主成分に寄与の大きい遺伝子はPPARαによって制御される遺伝子が多く,PPARα活性化によるTG減少を示すと考えられた。

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© 2006 日本毒性学会
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