日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-091
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循環器系
新しい催不整脈モデル:慢性完全房室ブロックサル
*坂本 憲吾大谷 光嗣坂本 貢野村 護佐藤 吉沖高原 章杉山 篤
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抄録

【目的】薬物によるtorsades de pointes(TdP)の発生を非臨床試験の結果から正確に予知することはこれまで困難であったので,現在のICH S7Bガイドラインは,薬物性TdPを予知できるin vivoモデルの開発を推奨している。最近、我々が開発に成功したカニクイザルの慢性完全房室ブロックモデルの特性をQT延長およびTdPの発生が臨床報告されている薬物を用いて評価した。【方法】体重約3 kgのカニクイザルをpentobarbitalで麻酔し,房室結節を電気的に焼灼して完全房室ブロックを誘発した。心臓のリモデリングが完成した慢性期に,ソタロール,シサプリドおよびアステミゾールを経口投与し, QT延長作用およびTdPの発生頻度を,ホルター心電計を用いて評価した。TdPは,QT延長に引き続いて発生したR on T型期外収縮から始まる多形性心室頻拍が6拍以上連続する場合と定義した。【結果】ソタロール,シサプリドおよびアステミゾール(各5 mg/kg)の投与によりTdPが各々4/5,2/3,3/5例に誘発された。TdPの発生回数は1〜78回,最大持続時間は2分であった。すべてのTdPは自然停止したので、適切な評価間隔を設けることで同じ個体を用いた複数の被験薬の評価が可能であった。【総括】慢性完全房室ブロックサルは薬物性TdPを予知できる有用な催不整脈モデルであることが証明された。薬物代謝には種差が存在するので、既に確立されている慢性房室ブロック犬モデルと併用することで,より信頼性の高い安全性評価が可能になると考えられる。

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© 2006 日本毒性学会
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