日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 281
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発表要旨
航空貨物流動動態からみる都市ネットワーク構造の変遷
*吉原 圭佑
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抄録

Ⅰ.はじめに

我が国の交通地理学では数多くの研究がなされてきたが、その研究対象の多くは鉄道やバス、自家用車にまつわるものであった。翻って、散発的に航空旅客・貨物に関する研究は存在するものの、航空・空運を主に論じる「航空地理学」の分野が体系立てて確立されているとは言い難い。さらに、航空旅客流動に比して航空貨物流動に着目した研究は少なく、世界規模での精緻な統計も数少ない。

Ⅱ.研究目的と研究対象

世界諸都市間の航空貨物流動を指標に、国境を超越する都市間流動の実態を明らかにし、都市ネットワーク構造がどう変遷したかを明らかにする。航空貨物の観点からの都市ネットワーク構造という新たな一面を提示するものである。研究対象ネットワークは、2018年時点の世界諸都市の航空貨物流動量上位40都市から伸びるネットワークとする。ICAO(International Civil Aviation Organization)が発行する、世界諸都市間の航空流動統計であるOFOD統計(On Flight Origin and Destination)を用いた分析の一例を下記に示したい。

Ⅲ.分析と考察

図1は、GaWC(Globalization and World Cities Research Network)の研究グループによる都市ランク分類にて、最上位のAlpha++とそれに次ぐ Alpha+の計10都市の航空貨物量の推移を示す。各都市でその動向は異なり、香港や中国、ドバイの新興都市が急激に流動量を増加させていることがわかる。それら都市の経済の活発化、都市間の紐帯の緊密化を示している。一方で、それら以外の都市では2009年にはリーマンショックに起因すると考えられる流動量の落ち込みが見られるなど、各都市のネットワーク構造の強弱が変化している。また、今後の課題としては、航空旅客流動の動態とは差異が見られるのか、などが挙げられる。

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