日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 313
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発表要旨
沖積層のボーリングコアを用いた学校教員向けのアウトリーチ
教員免許状更新講習の一環として
*植木 岳雪
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抄録

1.はじめに

 平成21年4月から教員免許更新制が始まり,幼稚園,小・中・高等学校の教員免許を有する者は,10年ごとに教員免許状更新講習受講することが必須となった.しかし,全国で地理の内容を含む講習は,選択領域の全講習の1 %以下と非常に少なく,学校教員が地理を学びたくてもできないのが現状である.

 演者は,「校庭で穴掘り隊,教室でコア見せ隊」と称して,平野部での地形・地層の学習をサポートするシステムを試行している.そこでは,生徒・児童が,身近な場所である校庭でさまざまな機材を使って穴を掘り,地層を掘り出す体験をしてもらう,あるいは,あらかじめ模式的なボーリングコアを用掘削しておき,コアを教室で観察してもらうようにしている.必ずしも地理を専門としない学校教員に,自然地理のアウトリーチとこのシステムを広げることを目指して,平成30年度の千葉科学大学の教員免許状更新講習として,選択講座「校庭で穴を掘る,教室で地層を見る」を実施した.本発表では,その講座の概要と参加者の評価について報告する.

2.講座の流れと参加者の評価
 午前の90分で,茨城県土浦市で掘削された沖積層の模式ボーリングコアの観察を行なった.コアの層相が上位に向かって礫→泥→砂と変化するのは,完新世前半の気候の温暖化と海面・河床の上昇に起因していることを説明した.午後の最初の90分で,検土杖,ハンドオーガー,ジオスライサーなどを使って,大学の敷地で穴を掘り,地層を掘り出した.ハンドオーガーでは,男性のグループは3.5 mまで掘ることができ,地下水面に到達した.次の60分で,コアや穴掘りに関係する授業案を示すポスターを作ってもらい,最後の45分で発表してもらった.講座の参加者は保育園・幼稚園,小学校の教員が多かったが,授業に役立つという意見が出され,自由記述も肯定的な感想が多かった.

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