日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P129
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発表要旨
治水地形分類図からみた2016年8月北海道豪雨災害 (その2)
空知川水系の被害状況
*研川 英征関口 辰夫野口 高弘飯野 一夫西村 智博田村 俊和平井 幸弘石丸 聡
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抄録

石狩川支流の空知川水系では,前線に伴う降雨に続いて台風10号が接近したことによって,2016年8月29日から31日までの期間に空知郡南富良野町の串内観測所で累加雨量が515mmに及ぶなど,各地で記録的な大雨が発生した.
南富良野町幾寅地区及び岐阜地区では,空知川本川沿いの低地で約130haが浸水し,住家約107戸,食品加工工場や福祉施設,道の駅等で浸水被害が発生した.
筆者らは空中写真撮影成果から浸水状況を把握するとともに,9月11日及び10月20日に浸水範囲について現地調査を実施し,その結果を治水地形分類図(更新版)「幾寅」「西達布」と比較して被災の特性を分析した.
浸水被害が発生した区間は,空知川本川が金山ダムによって形成されたかなやま湖に流入する上流側にあたる.
新栄橋下流及び大勝橋下流の左岸側堤防の破堤・越水によって堤内地に流入した氾濫水は,氾濫平野を最大幅900m程度で流下した後,氾濫平野を高さ2m程度の盛土で北北東・南南西方向で横断する国道38号によってせき止められ,これにより大平橋上流で堤内地側から越流・決壊,堤外地へ一部排水が行われるようになった.破堤箇所は一部が旧河道に該当するほか,大平橋より南東側600mほどの区間では旧河道に沿って特に明瞭な流下痕跡を残し,一部区間では側方侵食もみられる.なお,国道38号上流側の最大浸水痕跡は,旧河道沿いで地盤高+1.7mである.
一方,国道38号を乗り越えた氾濫水は下流側の岐阜地区に流入し,氾濫平野上の住宅地や福祉施設を浸水させ,さらに下流の堤防を越流ないしユクトラシュベツ川に合流して流下している.岐阜地区における浸水深の最大は,旧河道に沿う地区で地盤高+1.5mである.浸水範囲の大半は氾濫平野ないし旧河道に該当する.また,南富良野町役場が立地する扇状地の北端部も一部浸水しているが,浸水深は最大1m程度で,南側に向かって急速に浅くなる.

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