日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S101
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発表要旨
四日市公害から学ぶ「四日市学」
*朴 恵淑
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抄録

1970年代の日本の高度掲載成長を支えた1960年代の日本初の四日市石油化学コンビナートからの大気汚染によって環境が破壊され、尊い命が失われた四日市ぜんそく(四日市公害)の過去・現在・未来を見据え、環境と経済とのバランスからなる持続可能な社会創りの有効なツールとしての「四日市公害から学ぶ四日市学」は、人間と自然(環境)との関係を探る地理学の大命題となる。
四日市公害訴訟原稿側唯一の存命者である野田之一氏は「四日市市は、四日市コンビナートの誘致によって結局は損した。」と語り、四日市公害の写真や資料記録者であった故澤井余志郎氏は「公害問題は科学と数値だけでは説明しきれない。四日市公害を簡単に言うと、せんぞく・異臭魚・自然と環境破壊の3点セットであった。」と語った。四日市公害裁判を担当した裁判官の唯一の存命者である後藤一男氏は「裁判官は判決文にてものを申す。」と言いながらも「正直、四日市公害訴訟が一審で確定されるとは思えなく、あの裁判は最後までいくと思った。そのためにもしっかりした判決文を書かなければという信念があった。当時、3歳と5歳の子どもがいて、これ以上汚れた環境を残したくないといった信念があった。」と振り替えた。
四日市公害から学ぶ「四日市学」は、2000年4月に三重大学の人文社会科学・自然科学・工学・医学を網羅する学問横断的総合環境学として構築され、その後、日本地理学会環境地理学研究グループとの連携によって積極的に展開し、現在まで9冊の「四日市学」関連の書籍を出版した。2004年4月には、三重大学教養教育において四日市公害から学ぶ「四日市学」が開講され、毎年、新入生の約1/5に当たる250名を越える学生が受講している。
四日市公害から学ぶ「四日市学」は、人間学(生き物学)・未来学・持続可能な開発のための教育(ESD)・アジア学からなる。「四日市学」は、四日市公害を過去の負の遺産から未来へ正の資産に替えるため、地域の産官学民との連携及び国際モニタリングによる科学的評価に伴う国際環境協力のスキームの構築、グローバル環境人材を育成する専門家による認識共同体としての役割を担う。

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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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