日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1033
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中国における切花産地の発展要因
*戴 松君藤島 廣二
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キーワード: 切花生産, 企業, 農家, 連携
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抄録

切花は枝・茎をつけたまま切り取った花であり、生け花、花束及び装飾などによく利用されている。切花は労働集約的、かつ高付加価値の農作物であるため、その生産は農家収入の向上、農村余剰労働力問題の解決、農村地域経済の活性化に重要な役割を果たしている。 中国では改革開放政策の実施後、全国各地において切花生産が盛んとなった。当初は農家だけで生産に取り組んでいたが、1990年代に入ってから切花生産に企業が進出し始めた。ただし、企業は直接に切花を生産するだけではなく、主に農家との連携によって、すなわち“企業+農家”モデル方式でより多くの切花生産を行った。この“企業+農家”モデルが普及するにつれて、切花生産は一段と大幅に増加した。同モデルがまだ現れていなかった1990年の切花出荷量は1年間に中国全土で2億本であったが、同モデルが徐々に普及し始めた98年には20億本、そして2006年には107億本と、同モデルが普及するにつれて出荷量は50倍にも達した。こうした“企業+農家”モデルによる切花生産の急増をみて、研究面でも張蓉(「昆明市斗南村花卉生産的現状及産業化発展的対策」『中国農業大学学報』第6期・2003年)と程士国(「雲南花卉合作経済組織的現状透視」『経済問題探索』第4期・2007年)がその分析を試みた。しかし、両者の分析は“企業+農家”モデルのメリットを明らかにしたにとどまり、同モデルにおける企業と農家の具体的な連携内容を詳細に究明するものではなかった。そこで本研究では、中国有数の切花大産地である雲南省におけるトップ企業のA社、および同社と連携している農家とを事例に、“企業+農家”モデルの具体的な連携内容と問題点・課題を解明することとした。そして最終的には、この解明によって中国の切花産地の一層の発展を実現するための提言を行いたいと考えている。 今回の事例研究から明らかになったこと、すなわち“企業+農家”モデルにおける具体的連携内容は、主に以下の3点であった。1.企業は栽培品種を農家に提供し、農家が切花商品を生産する。この連携により、農家は比較的収益性の高い商品を多く栽培している。また、企業は土地や労働力の資本導入を削減できる。この連携は企業の市場情報と農家の生産能力または土地資源の合理的配置を実現した。2.農家各自による切花商品の運送は、時間がかかるだけではなく、品質も劣化する。それに対し、企業が統一的運送・選別・加工を行うことにより、規模の経済化、流通の効率化、品質の安定化を実現した。3.農家から集荷した切花商品は全て市場で取引を行う。市場取引は企業と農家の利益分配管理の透明化を実現することを可能にする。そのため、企業と農家は安定的連携関係を構築している。

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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