本稿では,オブジェクト自身が属性値を持たず対象間の近接性(相違度あるいは類似度)のみがマトリクスで与えられる近接性データのうち,特に近接性の尺度が計量的でない(距離の公理を満たさない)場合にデータの粒度を階層表現する試みについて述べる。本方法では,一方向的な近接性から二値分類を行い,そのJaccard係数から対象の「識別不能性」を指標化する。識別不能性は,対象を識別する知識がどれだけ堅固か(全体の中でどれだけ支持されているか)を表現するもので,堅固でない知識による分類から順に対象を併合し分類知識を粗くしていくことで,対象の階層的な粒度表現を行うものである。