日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T9-P-3
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T9.マグマソースからマグマ供給システムまで
日本の珪長質深成岩体の噴火能力
*佐藤 博明田結庄 良昭金丸 龍夫新井 敏夫
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抄録

この講演では日本の珪長質深成岩体の噴火能力 (Eruptibility) について議論する.Scaillet et al.(1998) と Takeuchi(2011) は噴火したマグマのマグマ溜り内での粘性係数は多くの場合10^6 Pa s 以下であることを示した.今回,噴火能力の指標として粘性係数 10^6 Pa s 以下を用い,深成岩体の噴火能力の検討を行った.Glazner (2014)は珪長質ミニマムメルトの粘性係数を温度―圧力図の中で示し,より高温高圧では粘性係数は低いが,0.1 GPaの圧力(深さ3-4㎞に相当)で780℃以下では粘性係数は10^6 Pa sを超えることを示した.今回,例として屋久島花崗岩YMG(Anma et al., 1998; SiO2=70.92 wt.%)について,rhyolite-MELTS (Gualda et al.,2012) を用いて水飽和における相関係を求め,バルクと液の粘性係数(Giordano et al, 2008),密度(Ochs and Lange, 1999) を求めたが,0.1 GPaの圧力で結晶作用と発泡・脱ガスにより,820℃以下ではバルク粘性係数は10^6 Pa sを超えることが示された.日本の多くの珪長質深成岩体は浅所貫入の特徴を示し,浅所ではマグマは発泡・脱ガスし,リキダス温度の上昇に伴って結晶作用が生じ粘性係数が増大し噴火能力を失う可能性が考えられる.日本の活火山の幾つかでは過剰脱ガスが観測されており,マグマ溜りから火道が浅所に達してその内部でマグマの対流脱ガスが生じ,その結果脱ガスしたマグマはマグマ溜りの底に噴火能力を失って沈積することが考えられている(Shinohara, 2008).日本の珪長質深成岩体では,(a) 掘削で浅所に高温花崗岩体が見出される,(b) 同時代の火山噴出物に貫入している,(c) 細粒斑状組織を呈する,(d) 晶洞,ペグマタイト,アプライト等が存在する,等,浅所貫入を示す場合が多くみられる.これらのことから,日本列島の珪長質深成岩体のかなり多くのものは浅所貫入で噴火能力を失ったマグマが固化したものである可能性が考えられる.(引用文献)Scaillet et al. (1998) JGR; Takeuchi (2011) JGR; Glazner (2014) Geology; Anma et al. (1998) Memoirs National Inst Polar Res; Gualda et al.(2012) J Petrology; Giordano et al. (2008) EPSL; Ochs & Lange (1999) Science; Shinohara (2008) Rev Geophysics.

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