日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T2-P-9
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T2.変成岩とテクトニクス
愛媛県高縄半島の領家変成帯から,ざくろ石菫青石片麻岩の発見
椿 陽仁*志村 俊昭
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抄録

はじめに 愛媛県高縄半島に分布する変成岩類と白亜紀花崗岩類は,領家変成帯に属している.この地域の花崗岩類は,トーナル岩質岩・花崗閃緑岩・花崗岩の3つの岩相に分類されている(越智, 1982).この分類に基づきジルコンU-Pb年代の測定が行われており,本発表研究地域に分布する湯ノ山花崗岩の年代は,98.8 ± 1.0 Maとされている(Shimooka et al., 2019). この地域の変成岩類は,半島基部に東西方向に狭長に分布しているほか,花崗岩体中にゼノブロックとしても分布している.これまでの研究による最高変成度での泥質片麻岩の鉱物組合せは,以下のとおりである.野戸(1975):Crd,Bt,Pl,Qz越智(1982):Crd,Kfs,Grt,Ms,Bt,Pl,Qz鳥海ほか(1991):Crd,Kfs,Grt,Ms,Bt,Pl,Qz高縄半島の領家帯の最高変成度での鉱物共生は,菫青石+カリ長石共生(宮崎ほか,2016)である.鉱物組合せでは上記のようにざくろ石と菫青石が含まれる泥質片麻岩の報告はされているが,ざくろ石+菫青石共生は今まで報告されていない.本研究地域の地質概説 本研究地域は,半島基部の変成岩類が分布する愛媛県松山市東部に位置する.本地域の花崗岩類は,角閃石黒雲母花崗岩体と黒雲母花崗岩体の2つの岩体に分けられる.両者は,越智(1982)の松山花崗閃緑岩(角閃石黒雲母花崗岩体),湯ノ山花崗岩(黒雲母花崗岩体)にそれぞれ対応する.どちらの花崗岩体も変成岩類の片理面に対して非調和的に貫入している.また,黒雲母花崗岩の岩脈が,半島基部の変成岩体と角閃石黒雲母花崗岩体に貫入している. 本地域の変成岩類は,半島基部の岩体と角閃石黒雲母花崗岩中のゼノブロックに分けられる.変成岩類には砂泥質片麻岩と珪質片麻岩,一部で苦鉄質片麻岩と石灰珪質片麻岩が見られる.また,珪質片麻岩・苦鉄質片麻岩・石灰珪質片麻岩は,砂泥質片麻岩中にレンズ状に産する.ゼノブロックには ,砂泥質片麻岩と珪質片麻岩が見られる.変成分帯 変成分帯については,本地域の泥質片麻岩(半島基部の岩体とゼノブロック)に産する鉱物(片理と調和的に産する鉱物)組合せに基づいて検討した.その結果は,以下のとおりである.また,本地域の変成度は,以下の結果より,南東から北西方向に上昇している.※ 以下の結果は,低変成度側から高変成度側へ,順番に示している.※ ()は稀に産するという意味である.黒雲母帯 Bt,Ms,Pl,Qz,(Chl)菫青石帯 Crd,Bt,Ms,Pl,Qz Grt,Bt,Ms,Pl,Qzカリ長石帯 Kfs,Crd,Bt,Pl,Qz,(Ms),(Tur) Kfs,Grt,Bt,Pl,Qz,(Ms),(Tur)ざくろ石帯 Grt,Kfs,Crd,Bt,Pl,Qz,(Ms),(Tur)ゼノブロック Grt,Crd,Bt,Pl,Qz,Tur岩石組織 ざくろ石帯とゼノブロックで見られる岩石組織は,以下のとおりである.ざくろ石帯:菫青石とカリ長石が密接に産し,それらを切るようにざくろ石が産する.また,白雲母は稀に片理と調和的なものが産する.ゼノブロック:カリ長石は産せず,ざくろ石と菫青石が密接に産する(下記のCOMPO像).また,白雲母は,片理と調和的なものは産せず,菫青石を切っているものが産する.鉱物化学組成 各分帯とゼノブロックのざくろ石の鉱物化学組成は,以下のとおりである. 菫青石帯:Alm36.9-52.3Sps37.2-54.2Prp3.7-5.8Grs3.2-5.6ざくろ石帯:Alm65.3-66.6Sps22.3-21.5Prp7.2-8.8Grs2.2-2.5ゼノブロック:Alm70.5-73.3Sps14.7-25.2Prp4.3-10.1Grs1.9-3.1ざくろ石の組成は,菫青石帯からゼノブロックにかけてspessartine 成分が減少し,almandine成分とpyrope成分が増加している.考察 本地域の花崗岩類は,貫入関係より,ゼノブロックを含む角閃石黒雲母花崗岩体のほうが,黒雲母花崗岩体より古いと考えられる.そして,本地域の最高変成度の変成岩は,ゼノブロックのものだと考えられる.また,ゼノブロックの泥質片麻岩は,ざくろ石と菫青石が平衡共存する変成度に達していたと考えられる.引用文献宮崎ほか (2016) 20万分の1地質図幅「松山」(第2版). 産総研.野戸 (1975) 地質学雑誌, 81, 59-66.越智 (1982) 地質学雑誌, 88, 511-522.Shimooka et al. (2019) JMPS, 114, 284-289.鳥海ほか (1991) 日本の地質「四国地方」. 日本の地質「四国地方」編集委員会, 6-8.

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