日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: T10-O-4
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T10(口頭).鉱物資源研究の最前線
深層学習に基づく画像検出システムを用いた南鳥島レアアース泥のイクチオリス層序年代決定
*北澤 尭大見邨 和英安川 和孝大田 隼一郎藤永 公一郎中村 謙太郎加藤 泰浩
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抄録

2011年に加藤ら [1] は,レアアースを豊富に含む深海堆積物「レアアース泥」が太平洋に広く分布しており,新たなレアアース資源となりうることを報告した.さらに2013年には,南鳥島周辺の日本の排他的経済水域内において,総レアアース濃度が5,000 ppm を超える極めて高品位なレアアース泥を発見し [2, 3],産学官による開発に向けた機運が高まっている.このレアアース泥を効率的に探査するためには,その成因を明らかにし,レアアースの濃集に必要な条件を満たす有望海域を理論的に絞りこむことが重要である [4].この成因解明の鍵となるのが,堆積年代である.

しかし,レアアース泥が区分される遠洋性粘土は珪質・石灰質の微化石をほとんど含まず,また古地磁気の記録も不明瞭である.そのため,海底堆積物の年代決定に一般的に用いられる珪質・石灰質微化石層序や古地磁気層序といった手法を適用することができず,堆積年代の決定は非常に難しいとされてきた.そこで着目されたのがイクチオリスと呼ばれる,魚類の歯や鱗の微化石である.イクチオリスは難分解性のリン酸カルシウムで構成されているため,海底堆積物中に普遍的に存在することが知られている [5].イクチオリスの生層序は 1970—80 年代に確立され,深海掘削計画 (DSDP) などで得られた遠洋性粘土コアの堆積年代決定に適用されてきた [6].そして,近年の我々の研究により,イクチオリス層序がレアアース泥の堆積年代決定にも有効であることが確認された [7].

しかしながら,従来のイクチオリスを用いた手法では,顕微鏡を用いてイクチオリスを1つ1つ手作業で分類する必要があり,作業効率の低さが大きな課題であった.この問題を解決するために,我々は深層学習モデルを用いたイクチオリスの自動検出システムを構築し,顕微鏡画像からイクチオリスを効率的に観察することを可能にした [8].このシステムを用いて,南鳥島EEZ内で採取されたコア試料 (MR14-E02 PC05) を対象にイクチオリスの検出と鑑定を行った結果,本手法が実際に年代決定に利用可能であることが示された [9].さらなる効果的な年代制約のために,我々はこれまで行えていなかった鱗の検出を目的として,新しい物体検出モデル [YOLO-v5] の使用の検討を進めている.本発表では現在までの検討結果と今後の展望について報告する.

<引用文献>

[1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience 4, 535-539.

[2] Iijima et al. (2016) Geochemical Journal 50, 557-573.

[3] Takaya et al. (2018) Scientific Reports 8, 5763.

[4] 安川ほか (2018) 地球化学 52, 171-210.

[5] Sibert and Norris (2015) Proceedings of the National Academy of Sciences, 112, 8537-8542.

[6] Doyle and Riedel (1985) Initial Reports of the Deep Sea Drilling Project, 86, 349-366.

[7] Ohta et al. (2020) Scientific Reports, 10, 9896.

[8] Mimura et al., submitted to Applied Computing and Geosciences

[9] 北澤ほか (2022), 日本地球惑星科学連合.

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