日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R21-O-1
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R21(口頭)第四紀地質
奈良東縁断層帯調査における奈良市三条本町NB-1ボーリングコアの概要
*三田村 宗樹高橋 春菜岩田 知孝
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抄録

奈良盆地東縁断層帯の調査のため,奈良市高畑町-宝来町において測線長約7kmの反射法地震探査が行われた(文部科学省・京都大学防災研究所,2020).さらに,この反射法地震探査と堆積層との関係を把握するために,掘進長303mのオールコアボーリング(孔番NB-1)が奈良市三条本町(北緯34度40分38.639秒,東経135度49分2.741秒,標高65.39m)で行われた.ここでは,採取されたボーリングコア(NB-1コア)の岩相と地層対比について,その概要を報告する.

NB-1コアは未固結-半固結の礫・砂・シルト・粘土からなり,少なくとも1層の海成粘土層と3層の火山灰層を挟む.NB-1コアの岩相は,下半部の深度303.3-129.6mは中粒-粗粒砂と砂質シルトの互層である.深度141.23mに厚さ0.5cmの白色中粒の火山灰層を挟む.この火山灰層は,多孔質型・中間型の火山ガラス(屈折率1.506-1.508)を多く含み,重鉱物は角閃石を主とし斜方輝石をともなう.上半部の深度129.6-11.3mは細礫-中礫を含む礫層と中粒-粗粒砂層を顕著に挟む礫・砂・シルト互層である.深度108.4-99.8mには暗青灰-青緑灰色を呈する比較的均質な海成粘土層が挟まれる.その上位の深度87.5-86.7mには淡桃白-白色を呈する中粒‐粗粒のガラス質火山灰層を挟む.この火山灰層の火山ガラス(屈折率1.499-1.501)は扁平型・中間型で多孔質型を少量含む.重鉱物は角閃石が大半を占め,少量の斜方輝石を伴う.また,深度43.3-42.8mには淡桃灰~淡紫灰色のシルト混じりの中粒のガラス質火山灰層を挟む.含まれる火山ガラス(屈折率1.511-1.512)は扁平型・中間型で多孔質型を少量含み,最下部では中間型・多孔質型を多く含む.重鉱物は斜方輝石が大半を占め,単斜輝石と少量の角閃石を伴う.深度11.30m以浅は中礫-大礫を含む砂礫層を主とし,最上部は腐植質砂混じり粘土層である.

深度87.5-86.7mに挟まれる火山灰層は,岩相の特徴・岩石学的性質の類似性,厚い海成粘土層の上位約12mにあるという層位関係などからピンク火山灰層に対比され,深度108.4-99.8mの海成粘土層はMa1層に対比できる.さらに,深度43.3-42.8mの火山灰層は,岩相の特徴・岩石学的性質の類似性から,アズキ火山灰層に対比できる.これより上位の層準については,周辺に分布する段丘構成層などとの対比は現在のところ明らかではない.

下半部の深度303.3-129.6mは,Ma1層より下位の大阪層群相当層とみられる中粒-粗粒砂と砂質シルトの互層で,北方の奈良丘陵・京阪奈丘陵で認められるMa1層より下位の大阪層群は礫質の礫・砂・シルト互層であり(三田村,1992;河村,1993),岩相が異なっている.深度141.23mに挟まれる火山灰層についても,Ma1層下位でこれまで認められた火山灰層と類似するものは見いだせない.これらの対比については,今後さらなる検討を要する.

NB-1ボーリングは,反射法地震探査(奈良測線)の反射断面(文部科学省・京都大学防災研究所,2020)のCMP520地点にあたり,この地点の標高-50m付近に認められる連続性の良い反射面はMa1層の下面に相当するとみられる.

引用文献

三田村宗樹, 京阪奈丘陵の大阪層群の層序と地質構造, 第四紀研究, 31, 159-177, 1992.

河村善也, 奈良丘陵の大阪層群, 地質学雑誌, 99, 503-523, 1993.

文部科学省・京都大学防災研究所, 奈良盆地東縁断層帯における重点的な調査観測,令和元年度成果報告書, 198p, 2020.

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© 2021 日本地質学会
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