日本地球化学会年会要旨集
2023年度日本地球化学会第70回年会講演要旨集
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S3 地球化学全般(地球化学の融合セッション)
球状コンクリーションの理解と応用 -自然に学ぶ長期シーリング新素材としての展開-
*吉田 英一
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p. 223-

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抄録

地球表層での続成作用や化石化作用は、堆積サイクルにおける元素の移動・固定に伴う現象によるものである。また人間活動に伴う資源消費やコンクリートなどのインフラ整備も、これらの地球表層での物質循環・固定の一部と見ることができる。このような物質循環に伴う変化は、自然界ではおおよそ緩慢である。一方、人間活動に伴う材料・物質の循環は非常に速く、その速度的ギャップが二酸化炭素による温暖化や放射性廃棄物の蓄積などといった、これまでに直面してこなかった課題を顕在化させている。その課題に対処するための方法として進められているのが、地下貯留や地下処分(隔離)などの地下環境の活用である。その最大の理由は、少なくとも103年以上もの時間スケールでの保持・隔離が求められることにある。そのためには、物質循環の激しい地表に保管(管理)するのではなく、石油や鉱物鉱床が保持されてきた地下環境に委ねる方が技術的かつ倫理的にも現実的と考えられている(OECD/NEA, 2021)。しかし、地下に貯留したり埋設・隔離するためには、ボーリング孔や搬入立坑、トンネルが必須であり、貯留や埋設後に漏洩・汚染拡大させないためにもこれらの「穴」を長期かつ安定にシーリングすることが不可欠となる。一方で、このような長期間のシーリングを可能とする技術(材料)を我々は有していない。例えば、工学的に用いられるセメントを基本とするグラウチング素材は、注入後のカルシウムイオンの放出等に伴い、そのシーリング(地下水の止水)性が損なわれる可能性があり、地層処分ではその効果は考慮されていない。この課題を解決するには、シーリング剤としての効果を有し、長期に渡って地下環境においても安定に存在し続ける素材(鉱物)を用いるしかない。その背景のもと、着目したのがコンクリーションである。

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