p. 215-
マルチアンビル高圧発生装置を用いて炭素が不飽和な系で金属鉄-ケイ酸塩液相間の炭素分配実験を行った。実験回収試料中の金属相、ケイ酸塩相中の炭素はそれぞれ電子線プローブマイクロアナライザ、二次イオン質量分析装置を用いて測定した。 我々の実験により決定された炭素分配係数は先行研究に比べて低く、またケイ酸塩相は炭素に飽和している可能性が示唆された。また、先行研究のケイ酸塩の炭素溶解度データを整理し、ペリドタイト組成のマグマオーシャンに適用したところ、炭素の溶解度が現在の地球マントルで見積もられている炭素量と誤差の範囲内で一致することを見出した。先行研究では炭素は金属核にほとんど取り込まれるため、現在の地球マントルの炭素量を説明するには核形成後に炭素に富んだ天体が降着する必要があると主張されているが、マグマオーシャンが炭素に飽和していた場合、このような過程を考える必要はなくなる。