p. 128-
秋田県南部小安地域は栗駒北部広域地熱地帯に位置する地熱地帯である。小安峡は珪化帯に相当し(NEDO皆瀬地域資料、1990)、凝灰質砂岩・シルト岩互層である三途川層の数カ所から沸騰温泉が噴出している。その熱水と反応することで噴出孔周辺の岩石が現在も変質帯を形成しつつある。変質帯の産状と成因を広域的に把握することは鉱床の探査において重要である一方で、元素の濃集過程と岩石の鉱石化を解析するためには局所的な組成変化とその空間分布を把握し、その結果より熱水反応時の元素挙動について理解する必要がある。本研究では小安峡の大噴湯近傍の70.5℃噴泉にて、噴出孔から距離を計測しながら、同一層準の熱水変質岩石を約9mに渡り断続的に採取して試料とした。そして試料間の鉱物の消長を確認し、岩石組成を比較して熱水の関与による元素挙動を解明し、現在進行中の組成変化を明らかにして岩石の変質過程を考察した。