海水のOs同位体比は,隕石衝突,大規模火成活動,大陸風化の促進,酸素濃度の上昇などの地質イベントを記録し,それらとグローバルな環境変動とのリンクを探る非常に有効なツールである(例えば,黒田ら( 2010)のレビュー)。海水のOs同位体比は,これまで鉄に富んだ遠洋性堆積物,黒色頁岩,チャートなどの堆積物の分析によって復元されてきた。ところが,堆積年代が制約され,かつ,保存状態のいい上記のタイプの堆積物試料が得られない時代もある。ここで,炭酸塩がOs同位体比の復元に有効であることが証明されれば,炭酸塩貸先物を使うことで,海水のOs同位体変動による環境変動を探る時代が大きく広がる。そこで,炭酸塩を主成分とする標準岩石JLs-1と現世のサンゴのOs同位体比を分析し,炭酸塩によって海水のOs同位体比が復元できるかどうかを確かめることを計画した。