火山の噴気温度は、火山活動の現状や山体内部におけるマグマ脱ガス過程に関する重要な指標のひとつであり、古くから頻繁に観測がおこなわれてきた。しかし、活火山の噴気に近づいて直接温度を測定することは多くの場合危険を伴い、また赤外放射を用いた遠隔測定では、観測距離が100メートルを超えると正確な噴気温度を測定することは困難になる。そこで本研究では、噴気ガス中に含まれている水素分子と主成分である水蒸気の間の水素同位体(HおよびD)交換反応の反応速度が、室温ではほとんど進行しないのに対して400度程度より高温の領域では極めてすみやかに進行して平衡に達し、しかもその際の同位体分別係数が温度とともに大きく変化するという特性に着目し、プルーム中の水素の水素同位体比から噴気中の水素分子の水素同位体比を推定してこれを温度に換算することで、噴気孔の温度を遠隔から測定する新手法を考案した。