大気海洋結合モデルで得られた氷期の気候場を利用して海洋炭素循環の応答実験を行った。氷期の気候場は、全球的な寒冷化と極域での海氷の張り出しに伴い、北大西洋深層水の沈み込みが浅く南極底層水が北上する。この気候場に対し、大気中の二酸化炭素分圧は20ppm減少した。この減少は、水温低下に伴う溶解度の増加が大きく寄与する。海洋循環の変化に対する大気中二酸化炭素分圧の応答は小さい。これは、海洋の成層化で深層での炭素貯蔵が増える一方で、海洋表層の二酸化炭素分圧の変化が小さいことに起因する。海氷拡大に伴う大気中二酸化炭素分圧の変化は、湧昇域で大気への二酸化炭素放出を抑える効果と、大気海洋ガス交換や生物生産を弱める効果とのバランスで決まり、気候場に大きく依存していた。海氷を含めた気候場の再現が、大気中二酸化炭素分圧の応答に不確実性をもたらすことを示唆する。