現在世界各地で酸性雨の影響による土壌の酸性化と、それに伴う河川や湖沼の酸性化が報告されている。西表島は豊かな自然を持つが地質が主としてケイ質砂岩から成ることから、将来的な土壌の酸性化が危惧されている。そこで、西表島における酸性降下物量と土壌の酸緩衝能の見積りを行った。雨水は降雨ごとに、土壌は西表島10域35地点で採取した。西表島の2005年~2008年の降雨の加重平均値はpH 4.93であり、年間を通じて降雨が酸性化していることが分かった。西表島の土壌の平均ECECは6.63 ceq(+) kg-1、BSは31%であり、環境省によって行われた日本各地の平均値である6.19 ceq(+) kg-1、31%とほぼ等しかった。しかし、浦内川流域や古見岳山頂部においてBSは十数%と低い値を示した。浦内川流域において現在の規模の酸性物質が降り続いた場合、土壌による酸の緩衝は残り約200年しか続かないことが分かった。