海水の炭酸イオン濃度のプロキシとしてサンゴ骨格のフッ素が使えるかを検証するために、フッ素含量と海水の炭酸イオン濃度の関係について研究した。ポナペ(ミクロネシア)、セブ(フィリピン)、カンカオ(タイ)、沖縄、堺、館山から採取したサンゴ骨格中のフッ素含量とカルシウム含量をイオンクロマトグラフ法とEDTA滴定法で決定し、骨格中のF/Ca比を求めた。その結果、サンゴの生育時の海水温が高いほどF/Caが低い傾向が認められた。また、採取地ごとに海水中のフッ化物イオンと炭酸イオンの濃度を推定し、サンゴ骨格中のF/Caを海水中の[F-]2/[CO32-]に対してプロットすると、比例関係が認められた。イオン交換反応に従ってサンゴ骨格中のF/Caは海水中の[F-]2/[CO32-]に比例すると考えると、海水温の上昇に伴い[F-]2/[CO32-]が減少し、サンゴ骨格中のF/Caが減少すると示唆される。