地層試料から3‐,8‐又は17‐位にアルキル基を持たないポルフィリンが見い出されている。これらのノルポルフィリンの生成機構を解明しその起源クロロフィルの特定に資することは、古環境あるいは堆積環境の解析において重要である。本研究では、ビニル基を有するモデル化合物としてピロフェオホルビドa及びカルボキシビニル基を有する3‐メトキシカルボキシビニルメチルピロールの加熱実験を行い、ビニル基及びカルボキシビニル基の選択的脱離反応の解明を試みた。いずれのモデル化合物のの加熱でも、クロム酸酸化生成物としてモノメチルマレイミドがフタルイミド類と共に生じた。この結果は2残基のビニルピロールが閉環した後、一方のピロールが脱離する機構でモノメチルピロールが生成したことを示唆している。これは、クロロフィル類が続成過程の初期において選択的脱ビニル化反応によりノルポルフィリンが生成することを意味するものである。