日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-188
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モデル生態系における生息地分断化の間接効果
*中桐 斉之泰中 啓一
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抄録

 モデルの生態系として、餌と捕食者の2種の生物の存在する生態系を考える。餌は空き地を見つけてある増殖率で増殖し、ある死亡率で自然死する。また、捕食者はその餌を食べて増殖し、ある死亡率で自然死するとする。
 この系に、近接する2つの格子点の間に壁をある密度でランダムに置く。生息地分断化・生息地破壊の程度は壁の密度によって表され、二種類の生物のうち餌だけが、生息地分断化の影響を受ける物とする。つまり、捕食者は壁の影響を全く受けないとする。このモデルにおいて、シミュレーション実験を行った。
 その結果、生息地分断化の増加に伴って餌の密度が増加し逆に捕食者が減少した。また、生息地分断化の影響が大きいと捕食者が最初に絶滅することが分かった。
 さらに、この生態系に捕食者を捕食する種を加えた3種系についても実験した。このとき、2種系のときと異なり、捕食者は増加し、その捕食者を捕食する栄養段階の最上位の種が一番先に絶滅することが分かった。また、その種が絶滅した後は、2種系へと移行し2種系の際と同様の振る舞いをすることが明らかになった。
 以上より、生息地分断化に伴う絶滅では、直接効果だけでなく、間接効果も重要となっていることが分かる。そして、絶滅する種は、2種系のときと3種系のときで異なるのである。これは、生息地破壊に対する生態系の反応がネットワークを構成する種の関係の強さだけでなく、その形や種の数に依存することを示唆している。
 生息地分断化の影響を考える際は、直接的に分断化の影響を受ける種に対して影響を与える直接効果だけでなく、その種の生息する場所での他の生物種に対しても及ぼす間接効果をも考慮する必要があると考えられる。そして、その効果は種の関係や強さだけでなく生態系を構成するネットワークの形や種の数をも考慮しなければならないことを示唆している。

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© 2005 日本生態学会
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