現在、丘陵地スケールや流域スケールでの保全管理計画の策定や議論が多く行われるようになっている。しかし、それら中地形スケールのような大きなスケールで雑木林の植生を研究した例は少ない。今後の多摩丘陵における雑木林の保全管理の計画を考えていくうえで地域特性を把握するため、人為的管理が行われているコナラ林を対象に、多摩丘陵に広がる町田市、多摩市、川崎市、横浜市、三浦半島基部の鎌倉市、逗子市において25地区220地点におけるBraun-Blanqut (1964)、藤原(1997)に基づく植物社会学的調査資料の比較を行った。植物社会学的表操作によって、その結果大きく3つのグループ帯として捉えることができた。1、タブノキ、イヌビワのような暖地性の植物が特徴的に現れる三浦半島基部に分布するグループ、2、ホオノキ、コブシなど山地性の植物が特徴的に現れる多摩丘陵に分布するグループ、また、3、両者の移行帯に当たるような、山地性の植物と、アカメガシワ、カラスザンショウが特徴的に現れるグループに区分された。さらに、3グループの中でも、管理の頻度(2_から_3年の放棄による低木層の種数の増加)や強弱(草本層の種数の増加)、地形的要因(ローム層の特性による種群のまとまり)などの環境要因の違いなどが示された。