日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-143
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本州中部亜高山帯におけるヤナギラン群落の復元実験
*森 有希大窪 久美子
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抄録

ヤナギラン(Epilobium angustifolium L.)は夏緑広葉樹林から亜高山帯針葉樹林域の下限に分布するアカバナ科の多年生植物で、高茎草原の構成種である。スキー場や道路法面緑化における外来植物の利用が問題となる中、在来種である本種群落の成立や個体群維持を可能とする植生管理方法が明らかになれば、半自然草原を活かした緑化に応用でき、保全生態・景観保全学的観点からの意義は大きい。そこで本研究ではヤナギラン群落の復元を目的とした植生管理の手法を検討するため、刈り取り実験を行った。調査地の池山(長野県駒ヶ根市)は標高約1650mにあり、地元有志により1999年以降本種群落復元のための刈り取り作業が行なわれてきた。この一部を提供していただき、ヤナギラン群落成立・未成立地に各8プロット(計16)設け、各々に刈り取り、無処理区を4プロットずつ設定した。2001年6月から10月と2002年、2003年5月から10月に毎月1回、植生調査(2m×2m)及び光量子密度測定(地際・上部)、個体群動態(1m×1m)を2003年9月に土壌含水率を測定した。刈り取り処理は2001年6、9月、2002年6、10月の調査終了後に、春はヤナギランを残し、秋は全植物を地際から刈り取り、蓄積されたリター層はプロット外に除去した。ヤナギランの相対積算優占度SDR2´は、刈り取り区で2001年より2002年に増加し、無処理区で変化がなかった。ヤナギラン区刈り取り区では競合種と考えられるミヤコザサやイタドリ等よりも、ヤナギランのSDR2´が高かった。刈り取り区では競合種イタドリのSDR2´は減少したが、ミヤコザサは減少しなかった。ヤナギランの8月の個体群密度はヤナギラン区刈り取り処理区で他区よりも有意に高かった。

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© 2005 日本生態学会
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