国営武蔵丘陵森林公園は、埼玉県のほぼ中央の比企丘陵に位置する面積304haの都市公園である。園内植生の大部分は、アカマツ林をはじめとした、コナラ、クヌギ林等の二次林であり、いわゆる武蔵野の雑木林の面影を今に残している。林床にはヤマユリ、オカトラノオ、ヒヨドリバナ等の草花が現在でも自生しており、これらの植物は下草刈といった適正な維持管理を行うことによって、二次林林床における生物多様性の維持や景観の創出を行うことが出来る貴重な資源である。このため都市緑化植物園では、1996年より「自然資源の保全・活用」をテーマに、これらの野生草花を用いた修景手法の検討を行った。これらの植物のうち、特に修景効果の高いヤマユリについては1997年より独立して研究を行うこととし、植生・林床管理水準の異なる調査区(5m×5m)11箇所で林床管理水準と生育状況(個体数・茎長・茎径・着花数等)との関連、2003年からは光量子密度計による光環境との関連を併せて調査した。調査区の経年変化をみると個体数は全調査区で微減傾向にあったが、林床管理水準が高い調査区では着花個体の割合が増加する傾向にあった。単年での比較では林床管理水準が高い調査区で個体サイズの小さなものでも着花個体となる傾向があった。当初の調査から8年が経過したが、本研究の今後の進め方を探る上で既往の調査結果を整理・報告する。