日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-136
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草原生絶滅危惧植物数種の分布特性と生態学的特性
*田川 哲石川 愼吾三宅 尚河野 円樹
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抄録

 近年,社会構造や生活様式の急激な変化に伴って半自然草原の多くが消失し,半自然草原を生活の場とする草原生植物の絶滅が危惧されている.四国においても残存している半自然草地は激減したが,塩塚高原(愛媛県・徳島県境,海抜1043.4 m)では現在も火入れによりススキ草原が維持されている.ここに生育する絶滅危惧植物のカセンソウ・ヒメヒゴタイ・モリアザミ・ヤナギタンポポの種子の休眠・発芽特性,実生の定着・成長特性などの生態学的特性を明らかにし,現地での個体群の分布と動態を把握することを目的とした.採取した種子を室温で1ヶ月保存の後,室温,冷乾,冷湿,野外の各条件で1_から_6ヶ月間保存し,段階温度法(Washitani,1987)を用いて発芽実験を行った.また,過湿,適湿,雨水のみの3 つの水分条件と相対光量子密度5 %,30 %,100 %の3 つの光条件を組み合わせた9 条件で実生の成長実験を行った.カセンソウはススキやトダシバが優占する草丈の低い草原に小さな群落を作り,ヒメヒゴタイは火入れや刈り取り管理の影響をほとんど受けない場所の急斜面に,モリアザミは春に刈り取られる防火帯に,ヤナギタンポポは火入れ地域の谷筋の比較的湿った立地に分布するなど,4種の分布域はそれぞれ異なっていた.各種の分布域と生態学的特性との関連性を明らかにするまでには至っていないものの,各種の発芽・休眠特性や実生の成長特性には違いが見られ,それらが草地での各種の分布域の差を生じさせている原因の一つと考えられた.例えば,カセンソウは相対光量子密度5 %では生存率が低く,相対光量子密度30 %,100 %で生存率が高く実生の定着条件と立地環境との対応が見られた.

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© 2005 日本生態学会
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