日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-122
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北海道スケールで見られる河川性底生動物群集の構造
*森 照貴村上 正志
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抄録

地域レベルでみられる生物多様性の地理的パターンを認識し,そのようなパターンを生じるメカニズムを理解することは,群集構造の決定メカニズムを明らかにするための有効な手段であり,マクロ生態学として定式化されている.緯度変化に伴う種多様性の変化は,多くの地域,生物群で普遍的にみられ,このパターンを生じるメカニズムが多数提示されている.しかし,緯度の変化に伴い,複数の環境要因が同時に変化するため,群集の多様性を決定する要因を特定することは難しい.
 河川は,河床構造や流速などの生息場所環境が,緯度の変化に伴って系統的な変化をしないため,このような,生物多様性が持つ地域パターンを検討するのに適した生態系であるといえる.さらに,北海道では南北方向の温度傾斜とともに,東西方向でも東に進むにつれて気温の低下がみられる.この二つの温度傾斜を利用して,河川性底生動物群集の種多様性に見られる,地理的パターンを明らかにし,このパターンをもたらすメカズムについて検討を行う.
 調査は北海道の沿岸域の36の小河川で行った.いずれの調査地も河川上流域に位置し,人為的な影響は少ない.これらの河川から採取した河川性底生動物群集は特徴的な地理的パターンを示した.個体数は,北,および東に向かって増加した.さらに,種数について,一般的な傾向と異なり,北に向かって増加するパターンが見られた.このような傾向は,一部の分類群に限らず,トビケラ,カワゲラ,双翅目など,多くの分類群で見いだされる.本発表では,このようなパターンを生じる要因について考察を試みる.

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© 2005 日本生態学会
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