日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P1-100
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長野県上伊那地方水田地域におけるトンボ群集構造及び環境選択と立地環境との関係
*九鬼 なお子大窪 久美子
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抄録

本研究は長野県上伊那地方において,立地環境の異なる水田地域におけるトンボ群集構造及び環境の選択と立地環境との関係性について明らかにすることを目的とした.調査地域は中山間地域(未整備2,整備済1)と市街化地域(未整備1,整備済1)の計5ヶ所を選定した.群集調査としてルートセンサスを行い,トンボ目の種名・成熟段階・雌雄・個体数・出現環境・出現位置・行動を記録した.2003年度は6月上旬から11月上旬まで月に2_から_3回,1調査地につき28回,計140回実施し,2004年度は4月下旬から10月下旬まで月に2回,1調査地につき26回,計130回実施した.土地利用調査は両年共に11月に実施した.総出現種は27種,総出現個体数36,953個体で,その分類群構成はイトトンボ科2種とアオイトトンボ科3種,カワトンボ科2種,サナエトンボ科2種,オニヤンマ科1種,ヤンマ科3種,エゾトンボ科1種,トンボ科13種であった.出現種数及び総出現個体数は中山間地で多く,市街地で少なかった.これは中山間地には池や川,湿地等の多様な水辺環境が存在し,周辺にねぐら等になる林が広がるためと考えられた.水田での生息が報告されている種は17種出現した.出現種の個体数データを用いてTWINSPAN解析を行った結果,調査地域は中山間地と市街地の2グループに分割され,トンボ群集は6グループに分割された.未成熟成虫の出現場所と行動の割合と成熟成虫雌雄別の出現場所と行動の割合から,各種の水田地域の利用の仕方について考察した.種毎及び成熟段階,雌雄別とペアにより出現環境と行動が異なり,それぞれの種特性や状態に応じて環境を選択して利用していると考えられた.水田地域のトンボ群集は立地条件の違いに応じて生息していることが明らかとなった.

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© 2005 日本生態学会
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