はじめに 日本に冬鳥として数多く飛来する水鳥(主にカモ類)は鳥類の中でも体が大きく集団で行動するため、中継池や越冬池となる池沼の生態系に何らかのインパクトを与える。最近、水鳥が数多く飛来する池沼において水質悪化が懸念されるが、詳細な調査は行われていない。そこで、水鳥と水質の関係を明らかにすべく、水鳥が数多く飛来する日本各地の池沼の水質変動調査を行った。
調査方法 調査池は宮島沼(北海道美唄市),伊豆沼・給餌池主池(宮城県若柳町),東京港野鳥公園・東淡水池(東京都大田区),片野鴨池(石川県加賀市),米子市水鳥公園・つばさ池(鳥取県米子市),以上の5つの池沼とした。採水は2004年7月から2週間に1度の頻度で、年間通して採水可能な地点で行い、現地にて水温・pHを測定し、持ち帰った試水をSS・Chl.a,栄養塩類,COD・DOCの分析に用いた。また同時に池の水鳥の飛来数をカウントし、種別に換算係数を乗じ「水鳥の総入り込み体重」を算出し、水鳥の体重、つまり排泄物量を加味する指標とした。
結果と考察 夏期の調査結果から、5つの調査池は_丸1_夏期に栄養塩レベルが低い池:水鳥公園・つばさ池、片野鴨池_丸2_夏期に水質が悪化する池:東京港野鳥公園・東淡水池、伊豆沼・給餌池主池_丸3_夏期後期に水質が回復する池:宮島沼と3つの異なるパターンに分けられた。このパターンの違いは池の水生植物(主に沈水植物)の繁茂、つまり夏期に生産者が植物プランクトンから水生植物に交代することが大きく関わっていると考えられる。また、宮島沼については他の調査池が越冬地であるのに対し中継地であることから、元来は夏期に栄養塩レベルが低い池タイプであるが、7月末まで春の水鳥の飛来の影響を引きずっていることが示唆された。