2016 年 23 巻 1 号 p. 59-64
実証的エージェンシー理論では,株主と経営者の間のプリンシパル・エージェント関係について考察されることが多い.そこでは,経営者と株主以外の行為主体が登場することは少なく,現代の企業においてその役割が重要視されている中間管理者が考察されていないように見える.しかしながら,この理論においても中間管理者の役割は考慮されている.この理論は,企業を経営者が集権的に管理するものであると決めつけている訳ではない.本稿では,企業の分権化,あるいは中間管理者の役割の立ち位置を実証的エージェンシー理論の枠組みの中で示し,分権化された企業を管理するには何が必要かを検証する.