日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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光合成CO2固定能強化が窒素代謝に及ぼす影響
*大鳥 久美丸山 俊樹丸田 隆典佐藤 滋柳澤 修一田茂井 政宏重岡 成
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p. 0844

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抄録

植物は炭素と窒素各々の代謝調節機構に加えて、細胞内の炭素、窒素代謝物の相対量比(C/Nバランス)を感知すると考えられているが、詳細は明らかにされていない。そこで、C/Nバランス制御機構解明を目的として、シロイヌナズナ葉緑体でのFBP/SBPase発現による光合成能強化が窒素代謝系の代謝産物および関連酵素遺伝子群の発現に及ぼす影響を検討した。FBP/SBPaseを葉緑体で発現させたシロイヌナズナ(ApFS)は野生株と比較して光合成活性は約1.3倍に、8週齢における生重量は1.2~1.5倍に増加していた。2週齢におけるApFS株ではカルビン回路代謝物量の増加、種々のアミノ酸量の減少が見られたが、種々の炭素・窒素代謝関連遺伝子発現量に有意な増減は見られなかった。一方、5週齢のApFS株では光合成産物量の増加、カルビン回路関連酵素遺伝子発現量の減少や窒素代謝関連遺伝子の増加が認められた。これらの結果より、生育初期では光合成能の上昇に伴い光合成代謝物量が増加し、生育の促進に伴って一時的に窒素が不足することによりアミノ酸が減少する。このようなC/Nアンバランスが、炭素代謝関連遺伝子の発現を抑制、窒素代謝系遺伝子を誘導することによって、C/Nバランスを維持していると考えられる。さらに、グルコース応答遺伝子の発現量が上昇していたことから、C/N制御にグルコースシグナリングの関与が示唆された。

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© 2011 日本植物生理学会
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