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植物の赤色・遠赤色光受容体であるフィトクロムには、複数の分子種が存在することが知られており、イネには、phyA, phyB, phyCの3分子種がある。それぞれの単独変異体あるいは2重、3重変異体の解析から、これらが多岐にわたる光応答反応で協調しながら、時に役割を分担して機能することが示された。そこで、phyA, phyB, phyCのそれぞれについて、プロモーター::GUSを作製して、その発現特性について解析した。2008年年会で既に報告したとおり、イネ成葉における発現組織には、分子種によりその優位性に差異があった。そこで今回は、幼苗および幼葉における発現、ならびに、光環境やフィトクロム遺伝子の変異がこれらの発現特性に与える影響について解析した。また、花器官における発現解析の結果についても報告する。更に、発現特性の生物学的意義を考察するために、オウンプロモーター::フィトクロム遺伝子によるフィトクロム変異体の機能相補解析に加えて、phyAとphyB間でのプロモータースワップ系統を作製、機能相補解析を行った。その結果は、光形態形成においては、phyAプロモーターはphyBの機能を相補できるが、phyBプロモーターはphyAの機能を相補できないという興味深いものであった。現在、出穂期についても同様の解析を行っており、これについても報告する予定である。