日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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酸性温泉藻シアニジウムはなぜ中性pHでは生育できないか?
*片山 るり子長尾 遼鈴木 健裕堂前 直奥村 彰規岩井 雅子榎並 勲
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p. 0720

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抄録

酸性温泉に生息する単細胞の紅藻シアニジウムはpH 1~3の酸性pHで生育するが、その細胞内pHは強力なプロトンポンプの働きにより中性pHに保持されている。このように耐酸機構については解明されているが、好酸機構(なぜ中性pHでは生育できないか)については全く未解明である。そこで、本研究ではこの基本的な問題を明らかにする目的で、シアニジウムを中性pHで培養してみた。その結果、pH 7では細胞は死滅するが、pH 6では増殖はしないが一ヶ月以上生育可能であることが分った。pH 6で培養したシアニジウム細胞を光学顕微鏡で観察すると、培養時間とともに4個の内生胞子をもった大きな細胞が増加し、3週間後には約5割までに達した。この結果は、pH 6でもシアニジウム細胞は4個の内生胞子をもつ分裂直前までは生育できるが、細胞分裂できないことを示している。そこで、細胞分裂に必要な酵素が細胞外酵素であり、その酵素が酸性pHでないと機能しないのではと仮定して、pH 6で2週間培養したシアニジウム細胞を遠心した培養液の中に蛋白質が存在しないか調べてみた。その結果、約34 kDaと29 kDaのみかけの分子量をもつ蛋白バンドがSDS-PAGEで検出できた。なお、酸性pHで培養した場合には、培養液中には全く蛋白質は検出できなかった。現在、これらの蛋白質の諸性質を調べ、細胞分裂に関与するかどうか調べている。

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© 2009 日本植物生理学会
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