日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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玄米カドミウム濃度の異なるイネ品種におけるカドミウムの蓄積要因の解析
*浦口 晋平森 伸介荒尾 知人石川 覚
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p. 0249

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抄録

作物のCd汚染に対する社会的関心が高まるなか,イネのCd吸収・蓄積に関わる要因の解析は、コメのCd濃度を低減させる技術を開発する上で重要な課題である。これまでに我々は,玄米のCd濃度には大きな品種間変異が存在すること,コシヒカリとカサラスを用いたQTL解析により玄米のCd濃度には遺伝的要因が関与することを明らかにした(Arao・Ae,2003; Ishikawa et al., 2005)。本報では,亜種の異なるササニシキとハバタキの2品種を用いて,Cd蓄積性を支配する要因を解析した。
水田の土壌溶液(節水時)で認められるレベルのCd(20μg/L)濃度に調製した水耕液を用いて,両品種の実生を2週間栽培した。地上部へのCdの蓄積は,濃度・蓄積量ともに曝露期間を通じてハバタキにおいて優位であった。蒸散量と導管液の解析から,ハバタキは,導管を介した地上部へのCd輸送量がササニシキより高いことが示された。ABA処理により蒸散量を品種間で同程度に抑制した条件下においても,導管液のCd濃度と地上部のCd濃度はハバタキで高かった。よって,ハバタキの高いCd蓄積性は導管へのCd積み込み能に起因すると考えられた。水田土壌を用いたポット試験の結果は,水耕栽培の結果を支持し,ハバタキの導管液,茎葉部そして玄米に高レベルのCdが認められた。以上の結果から,イネ地上部へのCd蓄積性に関わる要因として,導管液への積み込み能および蒸散を介した輸送能の重要性が示唆された。

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© 2008 日本植物生理学会
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