日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光合成電子伝達反応における光化学系Ι受容体側の制限
*津山 孝人後藤 栄治小林 善親
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p. 0115

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抄録

光合成電子伝達反応において電子は光化学系ΙΙから光化学系Ιへと伝達される。電子はさらに電子受容体NADP+へ流れ、葉緑体ストロマに還元力NADPHが蓄積する。電子伝達に伴い形成されたチラコイド膜内外のプロトン濃度勾配はATP合成の駆動力となる。生成されたNADPHおよびATPは炭酸固定を始めとする様々な代謝により消費される。強光下など光合成能力を超える電子伝達が可能な条件下ではNADPHの過剰な蓄積により電子伝達は滞り、光合成機能の阻害を引き起こす原因となる。本研究では、系Ι受容体側の電子伝達の制限について調べた。弱光下の定常状態で系Ι反応中心クロロフィル(P700)は全て還元型であった。P700は光強度の上昇とともに酸化された。これは、プロトン濃度勾配の形成による光合成制御を反映する。飽和光パルスの照射によるP700の酸化を調べたところ、極端な強光下に加えて弱光下においてもP700の最大酸化を得ることはできなかった。これは、還元型不活性P700の蓄積によると思われる。弱光下でP700が全て還元型にある場合、系Ι電子伝達の効率はほぼ100%であると考えられている。上記の結果は、弱光下でも系Ι電子伝達の効率は制御されていることを示す。弱光下での還元型不活性P700の蓄積の原因は、ストロマにおける電子受容体の不足にあることが分かった。

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© 2008 日本植物生理学会
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