日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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緑色ー赤色光吸収型間の光変換を示すシアノバクテリオクロムAnPixJの結晶構造解析
*成川 礼村木 則文志波 智生栗栖 源嗣池内 昌彦
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p. 0092

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抄録

フィトクロムは、植物において赤色・遠赤色光受容体として様々な光応答に関わっている。一方、シアノバクテリオクロムと呼ばれるフィトクロムと似て非なるタンパク質群がシアノバクテリア特異的に見出され、多様な分光特性が報告されている。これらのうち、推定走光性光受容体AnPixJが、フィコシアノビリンを共有結合し、緑色光吸収(Pg)型と赤色光吸収(Pr)型の間を可逆的に光変換することを我々は明らかにした。また、AnPixJのPr型はフィトクロムのPr型と色素の立体配置はよく似ており、Pr型からPg型への光変換過程においてフィトクロム同様、C環とD環の間のZ/E変換が起きていることが示唆された。本研究では、AnPixJのPr型の結晶化をハンギングドロップ蒸気拡散法により行った。その結果、1.8 ÅのX線回折分解能を示す結晶が得られ、結晶化条件に含まれていたヨウ素の異常分散効果を利用したSAD法により、結晶構造を決定することに成功した。全体構造はバクテリオフィトクロムとよく似ていたが、色素のタンパク質に対する結合位置は両者で異なっていた。また、色素を取り囲む環境はバクテリオフィトクロムと異なっているにもかかわらず、色素の立体配置は非常によく似ていることが明らかとなり、これまでの分光学的な研究結果と一致していた。これらの結果から、非常によく似たPr型から、特異なPg型への光変換機構について、Pr型の構造を基に議論する。

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© 2008 日本植物生理学会
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