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シロイヌナズナのMOM1はゲノム中の一部の反復配列や外来性遺伝子の転写型サイレンシングに必須の因子だが、既知の標的遺伝子のすべてが多コピーで存在していたため、詳細な機構解析は困難だった。今回、内在性シングルコピー領域の転写抑制にもMOM1が関与していることが明らかになり、詳細な解析が可能になった。マイクロアレイ解析により、mom1変異体でRNA蓄積量が上昇している遺伝子としてとしてcyclophilin40(CyP40)遺伝子が検出されたが、RNAブロット解析の結果から、mom1変異体では野生型には見られないサイズのCyP40 RNAが多量に蓄積していることが示された。解析の結果、(1)変異体で特異的に蓄積している転写産物は、CyP40遺伝子上流のトランスポゾン様配列内のシングルコピー領域に転写開始点をもつが、転写の向きはトランスポゾンの向きとは逆であること、(2)転写開始点付近およびCyP40遺伝子領域内のヒストンH3K4/K9/K27メチル化がmom1変異体における活性化に伴って変化しないこと、(3)蓄積している転写産物がCyP40遺伝子領域内でトランススプライシングを受けていることなどが明らかになった。トランススプライシングを受けたRNAは野生型においてもごく僅かに蓄積しており、変異体では幾つかのスプライシングパターンが検出された。