日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナUPF3は異常なスプライシングによるmRNAを抑制する
堀 孝一木崎 学*渡辺 雄一郎
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p. 852

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抄録

ナンセンス変異をもつmRNAから翻訳された不完全なタンパク質は生体に異常を引き起こす危険をもつ。生物はそのような異常なmRNAを監視し、分解する機能を持つ。これはNMD(nonsense-mediated mRNA decay)として動物および酵母においてよく知られている現象である。植物においてもNMDの中で重要な因子であるUPF1、UPF2、UPF3に高い相同性を持つタンパク質の存在がシロイヌナズナのゲノム情報上推定されており、NMD機構の存在が予測されているが、詳細な解析はなされていなかった。
本研究では配列データベースから375遺伝子のNMD標的遺伝子候補を予測し、さらにこの中で5つのNMD標的遺伝子候補の遺伝子構造を解析した結果、選択的スプライシングによりナンセンス変異を持つmRNAと持たないものmRNAが生じていることがあきらかとなった。このナンセンス変異を持つmRNA が実際にNMDの標的になっているかを、UPF3の機能が破壊されているatupf3-1変異体と野生型を用いて確認した結果、atupf3-1変異体においてナンセンス変異を持つmRNA は蓄積量および安定性ともに上昇していた。以上により植物にもNMDに類似した機構が存在し、UPF3が関与していることを示した。また植物においてNMDが選択的スプライシングから生じる異常なmRNAを抑制する働きがあることが示唆された。

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© 2006 日本植物生理学会
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