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ある生合成系に関与する遺伝子群は互いに協調的に発現していることが知られている。我々はこの特徴を利用した遺伝子共発現解析により未知のフラボノイド配糖化酵素遺伝子の機能同定を試みた。
シロイヌナズナにおいてフラボノイドは高次に配糖化されており、その構造から少なくとも8種類の配糖化酵素遺伝子の関与が推測されるが、そのうち4種類が同定されているにすぎない。シロイヌナズナには、119の配糖化酵素遺伝子が存在するが、配糖化は広範囲の二次代謝産物に見られる修飾系のため、その一次構造のみで機能を推定することは困難である。
我々は、公開データーベースATTEDを用いた共発現解析によりフラボノイド生合成系に強く相関の見られる配糖化酵素遺伝子を見いだした。その推定アミノ酸配列より、この遺伝子はフラボノイドの7位の配糖化に関与することが示唆された。複数の独立したT-DNA挿入変異体を分析したところ、7位のラムノシル化されたフラボノイドが検出できなかった。以上の結果から、この遺伝子はフラボノイド7ラムノシルトランスフェラーゼ(At7RhaT)をコードしていると考えられた。リアルタイムPCRによりAt7RhaT遺伝子発現産物は、つぼみで高い蓄積が見られ、この結果は、シロイヌナズナの各器官におけるフラボノイド分析の結果と矛盾しないものであった。