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植物の細胞死において、動物の細胞死の鍵酵素であるカスパーゼ様活性の関与が示唆されているが、その実体は明らかではなかった。我々はタバコモザイクウィルスによって誘導される過敏感細胞死において液胞プロセシング酵素 (VPE)がカスパーゼ-1活性の実体である可能性を示した(1)。VPE がカスパーゼ-1活性をもつか否かを酵素化学的に明らかにするため、昆虫細胞を用いてVPEを発現し、VPEの特徴を動物のカスパーゼ-1と比較した。VPEは自己触媒的にプロ型前駆体から活性型に変換され(2)、標的タンパク質の成熟化に関与するシステインプロテイナーゼであり、これらの点においてカスパーゼ-1と類似している。また、VPEはカスパーゼ-1の基質を切断し、カスパーゼ-1の阻害剤はVPE活性を抑制した。カスパーゼ-1の阻害剤を用いたインヒビターブロット法により、発現させた活性型VPEは阻害剤と特異的に結合していた。以上の結果から、VPEはカスパーゼ-1とアミノ酸配列上の類似性はないが、酵素化学的な特徴を共有していることが示された。
(1) Hatsugai et al., 305, 855-858 (2004) Science
(2) Kuroyanagi et al., 43, 143-151 (2002) Plant Cell Physiol.