日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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黒斑病菌に感染したサツマイモ塊根組織におけるエチレン生合成
*兵藤 宏吉岡 征次郎今井 佳史中根 紘子西川 芙美恵
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p. 355

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抄録

サツマイモ塊根が黒斑病菌(Ceratocystis fimbriata)の感染を受けると多量のエチレンが生成される。エチレン生成は黒斑病菌の侵入に伴ってサツマイモ塊根組織で誘導される。サツマイモ塊根を輪切りにして,その表面に黒斑病菌の分生胞子を接種し,その後表層から直径10 mm,厚さ0.5 mmの切片を切り取り,エチレン生成を調べた。接種後1日して表層(0-0.5 mm)の第一層で生成は最大に達し,2日以降は菌の侵入と共に生成部位は内部に移行した。筆者らはこれまでに,この感染組織におけるエチレン生成は高等植物で普遍的に見られるメチオニン-ACC経路に依存しないことを示した。今回の実験では,感染1日後の第一層を用いて,それに各種の阻害剤を与え,その結果から生合成機構を考察した。NADPHオキシダーゼ,ホスホリパーゼ,リポキシゲナーゼ,ヒドロキシラジカル,金属イオン等に対する阻害剤により,エチレン生成は有意に抑制された。金属イオンの阻害は銅イオンを与えることにより回復した。これらのことから,サツマイモ塊根組織では,膜リン脂質から不飽和脂肪酸が遊離し,過酸化を受け,ヒドロペルオキシ化合物が活性酸素および銅イオン(銅酵素)の存在下でエチレンに転換されると推定された。エチレン生成系の誘導はタンパク質の新たな合成を必要とした。今後はcell-free系でのエチレン合成を調査したい。

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© 2003 日本植物生理学会
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