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インレーおよびクラウン等の補綴物用材料として用いられる歯科用銀パラジウム銅金合金は, 口腔内において咀嚼などによる繰り返し応力を受けることが考えられるため, その疲労特性は重要であると考えられる。しかし, 本合金の疲労特性は, 十分に把握されていないのが現状である。そのため, 演者らは, これまでに本合金鋳造材のミクロ組織に及ぼす疲労特性について研究報告を行ってきており, 本合金鋳造材(鋳造まま材)の疲労強度が本合金加工材のそれと比べ低下することを示した。そこで, 本研究では, 歯科用精密鋳造機により製造した本合金鋳造材に種々の熱処理を施し, それらの試験片を用いて疲労試験を行い, 本合金鋳造材の疲労強度の改善を行った。
以上より, 本合金鋳造材の疲労強度は, 熱処理を施しミクロ組織を制御することにより向上させることができ, 本研究では1123WOが最も良い熱処理条件であると言える。